もくじ
資産形成と引き出しプランは完璧…のはずが?
「eMAXIS Slim オールカントリーで5年間しっかり積み立てて、その後は月10万円ずつ引き出しながら暮らす」——
そんな堅実なライフプラン、前回の記事でもご紹介しました。
実際に、運用利回りを3〜5%で想定すれば、30年以上にわたって資産を維持しながら生活費をまかなうことも現実的。投資初心者〜中級者にとっては「これならできそう」と感じた方も多かったはずです。
でも、ここにひとつ見落とされがちな“落とし穴”があります。それが今回のテーマ、「リターンの順序リスク(Sequence of Returns Risk)」です。
資産を取り崩すフェーズに入る前に、ぜひこのリスクを知っておいてください。知らずに突入してしまうと、「プラン通りに積み立てたのに資産が足りない!」という事態になる可能性もあるのです。
リターンの順序リスクとは?
投資の世界ではよく、「年平均で5%のリターンを目指す」といった表現を使いますよね。確かに、長期で見れば年3〜5%のリターンが期待できるというのは、eMAXIS Slim オールカントリーのような全世界株式ファンドでは現実的な数字です。
でも、そのリターンの“順序”によって、結果がまったく違ってくるというのがポイント。特に資産を取り崩しながら運用するフェーズでは、このリスクが深刻になります。
■ リターンの順序が与える影響とは?
たとえば…
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引き出しを始めた直後に相場が好調で資産が大きく増えた場合
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引き出しを始めた直後に暴落が起きて資産が減ってしまった場合
——この2つでは、最終的な資産寿命に大きな差が出るんです。
「でも、平均リターンが同じなら問題ないんじゃないの?」と思うかもしれません。たしかに運用だけしている場合はそれでOK。でも、「取り崩しながら運用しているとき」は話が変わります。
具体例:2人の運用シナリオを比べてみよう
ここでは、同じように積み立て、同じように毎月10万円を引き出しているAさんとBさんのケースで比較してみましょう。
● 共通条件
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初期資産:2,000万円
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引き出し額:年間120万円(毎月10万円)
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運用期間:30年間
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年平均リターン:5%
● Aさん:引き出し初期に好調な相場
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1年目〜5年目:+10%の高リターンが続く
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6年目以降:2〜3%と落ち着いた相場
結果:30年後も資産はしっかり残っている
早い段階で資産が大きく成長しているため、多少の下落があっても余裕を持って引き出しが可能。
● Bさん:引き出し初期に暴落が発生
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1年目〜3年目:−15%、−10%、−5%と下落続き
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4年目以降:回復して年5%の安定成長
結果:資産が早期に目減りし、30年続けるのが困難に
最初の下落時に資産を取り崩してしまうことで、後の回復が追いつかず、資産寿命が短くなってしまいます。
■ つまり、同じリターンでも…
「いつリターンが来るか」が重要!
運用だけしているなら平均リターンで判断できますが、取り崩すなら“リターンのタイミング”も見逃せないのです。
このリスクを軽減するためにはどうすればいい?
リターンの順序リスクは、完全に避けることはできません。でも、いくつかの工夫で影響を抑えることは可能です。
● 1. 引き出し初期の数年間は「生活防衛資金」でしのぐ
取り崩しを始める最初の2〜3年は、運用資産を使わずに現金で生活費をまかなうという戦略です。
つまり、**“クッション期間”**を設けるイメージ。もし初年度に暴落が来ても、慌てて資産を売らずに済むため、ダメージを最小限にできます。
● 2. 引き出し額を柔軟に調整する
市場が好調なときは通常通り10万円を引き出し、暴落が起きた年は少し引き出しを減らす。たとえば月8万円に抑えるだけでも、資産寿命は大きく変わります。
つまり、「機械的に毎月一定額を引き出すのではなく、相場の状況に合わせてコントロールする」という姿勢が大切です。
● 3. キャッシュポジションの確保
資産の一部を現金や債券など価格変動の小さい商品で持っておくのも、リスク分散になります。運用の“攻め”だけでなく、“守り”の部分も設計しておきましょう。
● 4. 分散投資+リバランスを忘れずに
eMAXIS Slim オールカントリーは全世界株式に分散されていますが、それでもリスクはゼロではありません。
年に1回など、「リバランス(資産配分の調整)」を行って、偏りを防ぐのも長期投資の鉄則です。
まとめとアクションの提案:数字だけじゃなく“リスクの質”にも注目を
「リターンの順序リスク」は、数字だけ見ていては気づきにくい落とし穴です。
でも、長期の資産取り崩しプランにとっては、実はかなり大きな影響力を持つリスクでもあります。
引き出し初期に暴落が来たらどうするか?
これを事前に考えておくことで、安心して資産を使いながら暮らす未来が見えてきます。
最後にもう一度、大事なポイントをまとめます。
✅ 今日からできる対策チェックリスト
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初期の数年間は生活防衛資金(現金)で備える
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引き出し額は相場に応じて柔軟に調整
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リスク分散とリバランスを定期的に実行
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「数字の平均」ではなく、“タイミング”の影響も意識する
資産形成の次は、“守る投資”が大事なフェーズ。
ぜひ、あなたの資産プランにもこのリスクの視点を取り入れてみてください。